中足部の横アーチ②:前足部の横アーチとの関係

足部/足首

アメリカ産アスレティックトレーナー(ATC)。リハビリ/トレーニング/治療、どれにおいても『解剖学』の知識と理解は欠かせないと日に日に感じています。解剖学をもっと勉強するため、そして私の知識が誰かの為になればいいなと思いブログを書いています!

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はじめに

こんにちわ😄

前回の記事では「中足部の横アーチに機能低下が起きると前足部の横アーチもうまく機能しなくなる」と書きましたが、今回はその理由について書いていきたいと思います

前足部ってどこ?中足部ってどこ?横アーチ?って方は

下記の記事をまずご覧ください😄👇

中足部の横アーチ②:前足部の横アーチとの関係

中足部の横アーチとタイドアーチのおさらい

最初に前回の記事のおさらいを少し😊

「中足部の横アーチ」は橋の構造の1つである「タイドアーチ」と構造が非常に似ています

「中足部の横アーチ」と「タイドアーチ」
中足部の横アーチ
アーチ橋

このようにアーチ状にした方が効率良く重さを支えることが出来ます

中足部の横アーチ、後脛骨筋(青)と長腓骨筋(赤)の引張方向
タイドアーチ(アーチ橋の種類の1つ)

さらに「タイドアーチ」では支点となる部分同士が引っ張り合うような構造があります

中足部の横アーチでも支点同士を引っ張り合う構造があり、それは「後脛骨筋」「長腓骨筋」によって行われていると考えられます

前回の記事では中足部の横アーチに機能低下が起きると、前足部の横アーチもうまく機能しなくなると書きましたが、今回はその理由について書いていきたいと思います

前足部の横アーチ

まず最初に前足部の横アーチとはどこでしょうか?

前足部の横アーチ
前足部の横アーチ 上から見た図
前足部の横アーチ 正面から見た図

前足部の横アーチとは「つま先の付け根の部分」

正確には中足骨頭の部分です

母趾内転筋とタイドアーチ

中足部がタイドアーチ構造をしているのは先ほど述べましたが、

前足部も同じようにタイドアーチ構造をしています

前足部の横アーチとタイドアーチ

そして前足部では支点同士を引っ張り合う役目は「母趾内転筋(ぼしないてんきん)」が担っています

母趾内転筋による引張
母趾内転筋斜頭と横頭
赤線が横アーチ、青が引っ張る方向

前足部荷重と母趾内転筋

前足部も中足部も「アーチ状」になっているのは、そちらの方が効率良く体重や重さを支えやすいからです

ではどのような時に前足部に荷重(重さ)がかかるのでしょうか?

前足部への荷重

立っている時は「かかと(後足部)」と「つま先の付け根(前足部)」にバランス良く体重が掛かっています(バランスが悪い人もいますが、、、、😭)

中足部は地面に着かずに浮いているので前足部と後足部の橋渡しの役割をしています

ですが写真のように走ったり歩いたりする際に「かかとが地面から離れる」と、

体重は中足部を伝って前足部にかかります(前足部荷重)

左の方はかかとが地面に着いているので体重を後足部と前足部で支えています(バランスが良ければ)

右の方はかかとが地面から浮いているので必然的に中足部を介して前足部のみで体重を支えています

かかとが浮いて前足部荷重になっている図

このように「かかとが浮く」と前足部に掛かる重さは増えますが、その重さで前足部の横アーチが崩れないようにしているのが「母趾内転筋」です

ただし、「母趾内転筋」というのは足裏にある小さな筋肉です

「かかとが地面から浮く」状態であれば体重のほとんどが前足部にかかりますが、そんなに大きな負荷を小さな「母趾内転筋」だけで支えられるのでしょうか?

その疑問の答えとなるのが「中足部の横アーチ」や「長腓骨筋、後脛骨筋」だと私は考えています

中足部の横アーチ、長腓骨筋、後脛骨筋、母趾内転筋

話を進める前に母趾内転筋の付着部などをおさらいしたいと思います

母趾内転筋の解剖学

<母趾内転筋斜頭>

近位付着部:第2〜4中足骨底、立方骨、外側楔状骨、長腓骨筋腱

遠位付着部:第1趾基節骨底外側面

<母趾内転筋横頭>

近位付着部:深横中足靭帯(第3〜5趾)、底側中足靭帯(第3〜5趾)

遠位付着部:第1趾基節骨底外側面

母趾内転筋には斜めに走る「斜頭」と横に走る「横頭」があります

この写真の横断面が右の写真

(右写真)中足部の箇所で後ろから母趾内転筋を見るとこんな感じになっています。斜頭、そして薄らと横頭も見えます

実はこの「母趾内転筋の付着部と位置取り」というのが「中足部と前足部の関係」を考えるにあたって非常に重要だと考えています

母趾内転筋の付着部、長腓骨筋と後脛骨筋

筋肉が適切に働くには筋肉の付着部である『土台』が安定している必要があります

それは母趾内転筋の場合も同じです

実は母趾内転筋の土台(付着部)を安定させていると考えられるのが「長腓骨筋と後脛骨筋」です

付着部の比較
母趾内転筋斜頭第2〜4中足骨底、立方骨、外側楔状骨、長腓骨筋腱
長腓骨筋内側楔状骨、第1中足骨底
後脛骨筋舟状骨、立方骨、楔状骨(内側、中間、外側)、第2〜4中足骨底

付着部を一覧にして見るとわかりやすいですが、母趾内転筋斜頭は長腓骨筋腱にも付着しています

他の母趾内転筋斜頭の付着部も後脛骨筋の付着部と重なる箇所が多いです

赤:長腓骨筋、青:後脛骨筋、緑:母趾内転筋

それゆえ「長腓骨筋」と「後脛骨筋」がしっかりと機能して母趾内転筋斜頭の付着部を安定させ、その安定した土台を基に母趾内転筋斜頭が機能すると考えられます

母趾内転筋の位置と中足部の横アーチ

そして母趾内転筋の位置と中足部の横アーチも密接に関わっています

中足部の横アーチと母趾内転筋

この写真からわかるように、母趾内転筋は中足部のアーチに覆われているような形になっています(青線:中足部の横アーチ、赤丸:母趾内転筋)

実際には母趾内転筋の下には長腓骨筋と後脛骨筋があるので、トンネルのような状態になっています(紫線が長腓骨筋、緑線が後脛骨筋)

長腓骨筋と後脛骨筋によるアーチの支持
荷重によってアーチが保てない場合のイメージ図

前回の記事でも書きましたが、長腓骨筋と後脛骨筋は中足部のアーチが潰れないように引っ張りあっています(タイドアーチ構造)

ですが実はそれだけではなく、母趾内転筋が中足部のアーチの下に位置することから、中速部のアーチを保つことで「母趾内転筋のスペースを確保」しているとも考えられます↓

中足部横アーチによる母趾内転筋のスペース確保
中足部横アーチ低下による母趾内転筋への圧迫

ですので中足部のアーチが保てない時は母趾内転筋も上から「押し潰されてしまう」ような状態となり、母趾内転筋による「前足部の横アーチの維持」という役割が十分担えない可能性が高いです

以上の解剖学的特徴から、中足部の横アーチが維持出来ない時は母趾内転筋がうまく働かず、それゆえに前足部の横アーチにも機能の低下が起きやすいと考えています

あれ?結局のところ横アーチがしっかりしていると何のメリットがあるんだっけ?

横アーチがしっかり機能していると以下のようなメリットがあります

  • 効率良く体重や重さを支えられるようになる(少ない力で効率良く支えるので疲れにくい)

  • 足の力をしっかりと地面に伝えられるので動きやすくなる

  • 横アーチが崩れると他の部位で補う必要があり、そういった部位への負荷を減らせる

特にスポーツ選手はしっかりとした横アーチは必要です!

一般の方でも足にトラブルがある方は横アーチが崩れている場合が多いです

参照資料

1 ウィキペディア:アーチ橋

2 KENHUB:Adductor hallucis muscle

3 ネッター解剖学アトラス原書第5版

4 Atlas of Anatomy

今回のオススメ書籍

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